外科学臨床講義Ⅱ

外科学臨床講義Ⅱ

考える臨床医であるために知っておきたい外科学の最近の進歩

  • 定価 20,900円(税込)
  • 著:小川 道雄
  • B5・530ページ・上製 函入
  • 発行年月:2001年01月
  • ISBN 978-4-89269-379-3
  • ※記載されている所属・肩書は、出版当時のものです。

外科臨床の最大のテーマである腫瘍を中心に据えながら、発癌機構から原因・診断・治療・予後に至るまでの過程を、分子生物学、浸襲学の視点を取り入れ、わかりやすく解説。創意に満ち、示唆に富む本書は、進歩し続ける小川外科学の真骨頂と言え、高い評価を得ている。

1 現代外科の先駆者たち:ビルロート,コッヘル,ハルステッド
1 Christian Albert Theodor Billroth (1829 ~1894)
2 Emil Theodor Kocher (1841~1917)
3 William Stewart Halsted (1852 ~1922)
4 3人が現代外科の先駆者として尊敬を集める理由は何か?
5 外科医に求められるものは何か?
侵 襲

2 急性膵炎とサイトカイン:侵襲後になぜ臓器不全が発生しやすいのか
1 膵臓の自己消化が起こる可能性は常にある
2 重症膵炎の診断と治療の問題点は何か
3 重症膵炎における臓器不全に高サイトカイン血症はどのように関与しているか
4 サイトカインとは何か
5 侵襲学ではサイトカインをどうとらえるべきか
6 侵襲時にどのようにしてサイトカイン血症が発生するか
7 サイトカインが血中を流れるとどのような反応が起こるか
8 侵襲後になぜ臓器不全が起こりやすいか
9 臓器不全の発生機序としての“second attack theory”
10 侵襲後の臓器不全治療はどうあるべきか
11 臓器障害は生体防御というコインの裏側にある
12 サイトカインがなければ生体の恒常性は保てない
腫 瘍
3 癌の発生しやすい素質,進行しやすい状況がある
1 多重癌症例が増えている
2 癌は遺伝子の病気である
3 ミスマッチ修復遺伝子の異常があれば癌になりやすい
4 癌発生の一次予防を励行する
5 移植後には癌が発生しやすいか
6 MHCで厳格に体制を維持している
7 癌遺伝子の変異で今まで自己にない蛋白が作られたら,免疫応答が起こるのではないか
8 移植と腫瘍ではHLAは正反対の役割を担っている
9 生体防御反応は増殖促進のシグナルとなる
10 MHCはすべての臨床医が知っておかねばならない大切な分野である
11 侵襲は癌が進行しやすい状況を作る
12 ほんとうの外科医は,手術をしないという選択もできる外科医である
13 癌は今後も増え続ける
14 医師は医学の進歩を一生学び続けなければならない
4 転移が癌の予後を決める:癌細胞はどのようにして転移するのか,それをどのように防ぐか
1 癌細胞は3つの特徴をもつ
2 癌は遺伝子の病気である
3 遺伝子異常が1つの細胞に蓄積して癌細胞が誕生する
4 癌細胞は重要臓器に転移する
5 血行性転移の転移臓器はどのようにして決まるか:seed and soil theoryと mechanical/anatomical theory
6 癌細胞の挙動は好中球のそれと酷似している
7 転移しやすい癌は超エリート細胞で,多くの機能をもっている
8 癌の制圧は血行性転移の阻止にかかっている
9 手術時にすでにある微小転移をどのように治療するか
10 進行・再発癌の治療にあたっては,腫瘍の消失だけに目を奪われてはならない
11 転移の成立をどのように阻止するか
12 外科医はなぜ癌遺伝子に興味をもつか
13 外科医は内科医より偉くなければならない
5 分子生物学の進歩と腫瘍外科:今後の展開
1 癌の中には発見時にすでに全身病となっているものがある
2 癌が局所病にとどまるか全身病となっているかをどう見分けるか
3 手術が癌を全身病にしてしまうことはないか
4 手術による組織損傷の修復のために,増殖のシグナルが誘導される
5 手術は癌細胞の進展に有利な環境を作るから,癌の遺残がある状態で過大な手術をしてはいけない
6 手術が癌の増殖,進展,転移に有利な環境を作り出してしまう可能性を忘れてはならない;生体は手術で悪いところを取ってくれているとは理解しない
7 癌の外科治療には限界のあることを知って治療にあたる
8 リンパ節転移のない癌にも局所病にとどまる癌と全身病となっている癌がある;分子生物学の手法を応用した癌の進行度の診断
9 DNA転移がなぜ予後にかかわってくるのか
10 分子生物学の成果を取り入れて癌治療を変えていく
11 最近の分子生物学の進歩はかえって癌を複雑な理解しがたいものにしている
12 癌遺伝子の変異を矯正するような型の遺伝子治療は有効だろうか
13 これからも癌の治療は外科医が中心となって行われるだろう
6 胃癌の「かたち」:「かたち」は分類の何に役立つか
1 胃癌の「かたち」を分類することは何に役立つか
2 Borrmannはどのような目的で胃癌の「かたち」を分類したのか
3 胃癌は Borrmann によって4つの肉眼型に分けられた
4 胃癌の「かたち」は進行度や予後にどのように関係しているか
5 4型胃癌は相対的に若い女性に多く発生する
6 胃癌の性質はその「かたち」とどう関係しているか
7 胃癌の「かたち」の分類は術者が術中に使用する目的から離れ,胃癌の治療を行うものすべてに役立つことがわかった
8 早期胃癌の「かたち」が新しく分類された
9 その他の胃癌の「かたち」の分類;梶谷分類と Mikulicz 分類
10 胃癌には個性があるが,共通性もある。それが「かたち」となる
11 5型胃癌をどう考えるか
12 現在わが国ではどのような胃癌の分類が用いられているか
13 胃癌の「かたち」は胃癌の全体像を推測するのに役立つ
7 大腸粘膜上皮細胞から大腸癌細胞へ:多段階発癌機構
1 良性腫瘍と悪性腫瘍はどう違うか
2 大腸癌のなかには良性腫瘍から癌化したものが多い
3 良性の腺腫から異型度を増してくるにつれて癌遺伝子の変異の数が増える
4 Adenoma-carcinoma sequenceを分子生物学の進歩で説明できるようになった;多段階発癌機構
5 癌関連遺伝子に変異の起こる順番が変わったらどうなるか
6 転移巣が原発巣よりはるかに大きいものや急速に転移巣を作る大腸癌を分子生物学的にどのように説明するか
7 多段階発癌機構を知ることは癌の発生の予防や進行の遅延を考えるヒントを与えてくれる
8 大腸粘膜細胞は細胞分裂をし続けるのになぜ粘膜は厚くならないか
9 Asymmetric division が symmetric division に切り替わる機構は何か
10 Renewal switchはAPC遺伝子の変異以外にもある
11 Li-Fraumeni 症候群ではなぜ大腸癌が発生しないのか
12 癌関連遺伝子は三つに分けて捉えられるようになった
13 COXの作用を抑えると大腸癌ができにくくなる
14 大腸癌の発生や進行を遅らせることはできないか
15 多段階発癌機構を知ることは癌細胞誕生をブロックするための作戦を考えるのに役立つ
16 外科医はなぜ癌遺伝子研究に熱心なのか
17 外科医の研究の究極の目標は外科的な治療をなくすことにある
8 遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC):詳細な家族歴の聴取は発症前診断につながる
1 大腸癌の特徴の一つに家族集積発生がある
2 癌は遺伝子の病気であるが,ほとんどは遺伝しない
3 大腸癌には遺伝性のものがある
4 癌細胞にみられる遺伝子異常は3つある
5 ミスマッチ修復機構は印刷の間違いをみつけて直す校正係である
6 ミスマッチ修復機構が働かないと変異が1つの細胞に蓄積する
7 遺伝性非ポリポーシス大腸癌の原因遺伝子はミスマッチ修復遺伝子群のどれかである
8 遺伝性非ポリポーシス大腸癌にはどのような特徴があるか
9 遺伝性非ポリポーシス大腸癌をどのように診断するか
10 遺伝性非ポリポーシス大腸癌ではなぜ特定の臓器に癌ができやすいのか
11 遺伝性非ポリポーシスは大腸癌が疑われたら,どのように診断を進めるか
12 病歴を詳細にとることが何よりも大切である
13 繰り返し構造の1つが異なって複製されただけで,なぜ異常が起こるのか
14 遺伝性非ポリポーシス大腸癌と診断したら,どのように治療をするか
15 遺伝性非ポリポーシス大腸癌の診断には甘い基準を用いるほうがよい
16 臨床医は常に詳細な病歴聴取をするように心掛けねばならない
9 肝細胞癌は再発を繰り返す:個性に基づいた「個別化集約治療」の必要性
1 増え続ける肝細胞癌
2 一新した肝細胞癌の発生機序
3 肝炎ウイルスの特徴
4 肝細胞癌の発生機序
5 起因ウイルスと肝細胞癌の特徴
6 肝細胞癌の臨床的特徴
7 肝細胞癌の再発
8 肝細胞癌の多中心性発生をどのように証明するか
9 肝細胞癌の治療
10 マイクロ波凝固療法(MCT)の原理と治療成績
11 肝細胞癌は1例1例みな違う。治療は個性に基づいて個別化して行わねばならない
10 膵体尾部癌の治療成績を向上させるための診断法の進歩
1 膵体尾部癌の予後はきわめて不良である
2 膵体尾部癌を早期発見する方法はないか
3 Massとして見つけた膵体尾部癌はもう手遅れである
4 膵体尾部癌に伴う急性膵炎から膵癌を疑う
5 膵体尾部癌を早期に見つけるための新しい方法には,どのようなものがあるか
6 テロメラーゼとはどのようなものか
7 無限の細胞増殖にはテロメラーゼが必要である
8 アポトーシスの回避はテロメラーゼの発現につながっている
9 膵液中にテロメラーゼ活性があれば,膵癌を疑う
10 テロメラーゼ活性阻害を癌治療に応用できるかもしれない
11 膵癌に罹患しやすい人を見つけることも大切である
12 医師は一生勉強しなければならない
11 全身病(systemic disease) としての乳癌
1 乳癌はどのような状況で発生しやすいのか
2 乳癌に対する手術はどのように変わってきたか
3 乳癌は早期から血行性に転移する
4 乳癌が全身病であることを証明する
5 乳房温存手術の有効性を証明する
6 局所再発があるのになぜ生存率に差はないのか
7 乳房温存手術はどのくらい行われているか
8 教室では乳癌手術をどのように行っているか
9 温存した乳房に再発するのはどのような状況のときか
10 すべての浸潤癌には全身療法の併用が必要である
11 癌治療に際しては,患者の自己決定権を尊重しなければならない
12 乳癌のリスクと家族内集積
1 乳癌にはハイリスク・グループがある
2 乳癌は家族集積性の高い癌の一つである
3 癌は遺伝子の病気であるが,そのほとんどは遺伝しない
4 遺伝性乳癌の原因遺伝子が単離された
5 保因者診断を受けるか受けないか?
6 自己決定権を尊重する
ケ ア
13 自己決定権,インフォームド・コンセント,癌の告知
I インフォームド・コンセントと癌の告知は同じものか
II 患者の自己決定権とは何か
III 自己決定権の行使に必要なのは何か
IV 自己決定権は憲法で保証されている
V 「説明」と「同意」の間には「理解できる」ことが必要である
VI 『大学病院で母はなぜ死んだか』で学ぶもの
VII インフォームド・コンセントと癌の告知はどう違うのか
VIII インフォームド・コンセントが得られないときはどうするか
IX 癌の告知は避けられなくなってきた
X ムンテラとはどう違うのか
XI 癌の告知はどのようになされているか
XII どのようなとき癌の告知が必要となるか

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