小児看護と看護倫理

小児看護と看護倫理

日常的な臨床場面での倫理的看護実践

  • 定価 3,520円(税込)
  • 編集:松岡 真里
  • B5・216ページ・並製
  • 発行年月:2020年04月
  • ISBN 978-4-86719-000-5
  • ※記載されている所属・肩書は、出版当時のものです。

日常の臨床場面で“もやもや”することはありませんか?


子どもに説明しないで処置や検査をしてもいいの?
子どもの治療は誰が決めるの?
子どもが入院したら親の付き添いはあたり前なの?

 

その気づきこそが、子ども・家族を守る
倫理的看護実践につながります。

 

【本書の概要】
日常的な臨床場面での倫理的看護実践に焦点を当て,ケアの場面で疑問や葛藤を感じたときや,何気なく行っているケアを振り返る際に,思考を整理し,考え,行動することにつながる“気づき”の機会となるようにテーマと事例を精選。
小児看護に携わる看護師はもちろん,普段は子どもにかかわることの少ない看護師が子どもや家族のケアに疑問を感じたとき,また、教員や看護学生にも十分活用できます。

【本書のポイント】
・小児看護を取り巻く看護倫理に関する「総論」と,日常的な臨床場面での疑問や倫理的葛藤を事例提示して分析する「各論」の2部構成。
・事例の内容が想起できるように,看護師が感じる疑問や葛藤を表現したタイトル。
・各事例の“もやもやポイント”をわかりやすく列記。
・各事例の分析には,「Thompsonの10ステップモデル」か「Jonsenの4分割表」を用いて,それぞれを選択した理由を記述。
・各事例では,「そのほかの想定される場面」として類似事例をさらに解説。

Ⅰ章 総論

① 小児看護と看護倫理
日常のなかでの気づきとケアの意味

② 看護倫理に関する基礎知識
倫理原則,モデル紹介

③ 小児医療の臨床倫理アプローチ
話し合いを始めるときに共有したいこと

④ 倫理的課題を調整するうえでの看護師の役割

⑤ 倫理的感受性を高める看護師教育

⑥ 子どもを取り巻く研究に関する倫理

⑦ 医療のなかでの子どもの権利保障
法律家の立場から

Ⅱ章 日常の看護場面での倫理的課題

テーマ① 十分なケア提供ができていないこと
付き添いのない個室管理中の子どもが泣き続けているのは仕方がないことなの?
家族の付き添いのない幼児が泣き続けているが,十分にかかわれない

重症の子どものケアが優先され,手術前の子どもに十分かかわれないんだけれど
重症心身障がいのある子どものケアに時間を要し,手術を予定している子どもと家族に十分かかわれない

いつも同じ番組が流れているけれど,それでいいの?
不穏状態や他傷行為につながる子どもへの対応を優先して,ほかの子どもの意思が尊重されていない

テーマ② 子どもの権利と尊厳
安全確保のために子どもを抑えて処置をするしかないの?
プレパレーションをしているけれど,最終的にはいやがっている子どもを抑制して処置を続けている

環境の変化に脆弱なのに短期入所を利用することは子どもにとって苦痛ではないの?
NICU退院後も身体状態が安定しないまま在宅生活を送り,短期入所を利用しているが,子どもの全身状態への影響が懸念される

テーマ③ インフォームドコンセント,インフォームドアセント
幼児に病気や治療の説明を行わないまま薬をすすめていいの?
病気や治療に関して子どもの納得を得ないまま,服薬のかかわりを行っている

大人になり,自分で意思決定をしていく準備ができているの?
先天性疾患で成人になった患者本人が,意思決定の主体が移行されていないまま治療の選択を迫られている

テーマ④ 子ども・家族の自己決定
子どもに知らされないまま無理やり処置をすることになったんだけれど
行われる処置を子どもが直前まで誰からも伝えられず,拒否をしたが処置が実施された

子どもの治療は誰が決めるべきなの?
母親から,手術および上肢切断をすることについて子どもを説得してほしいと相談があった

テーマ⑤ 安全確保と抑制
これから発達していく子どもに抑制は必要なの?
気管チューブの事故抜去を予防するために身体拘束が行われている

上肢抑制は本当に24時間必要なの?
前施設のやり方を評価せずに24時間の抑制を続けている

子どもの状態と母親の状況から鎮静薬投与の提案をしてみたけれど
母親と看護師の間で鎮静薬投与への考えが異なる可能性がある

テーマ⑥ 家族支援
生命の危機的状況にある子どもの親をどう支えればいいの?
治療の差し控えに焦点をあてるのではなく,“親だからこそ抱く感覚”を支えることが大切なのではないかと悩む

母親だから仕事をやめて,子どものケアをするのはあたり前のことなの?
医療的ケアを必要とする子どもが退院するにあたり,母親は子どものケアだけでなく自分の人生についても不安を感じている

子どもの状態の安定を図り,家族の時間を保つために最適な環境を考えたいけれど
集中治療室から一般病棟への転棟が子どもと家族の時間確保につながると考えるが,一般病棟で治療の継続ができるか不安に感じている

テーマ⑦ 終末期医療を取り巻くこと
「もう移植はしたくない,やりたいことがある」という子どもの意向が尊重されなくていいの?
子どもの意向に反して,十分な情報提供がされないまま,親や医療者中心で治療方針が決定される

意思表示ができない子どもの生命維持装置をどう考えればいいの?
集中治療中に終末期となった子どもの親から,人工呼吸器を外してほしいとの希望があった

テーマ⑧ 守秘義務
「お母さんには言わないでね」と子どもに秘密を打ち明けられたけれど
「手術を受けたくない」と子どもに打ち明けられたが,母親を悲しませたくないからと「親には伝えてほしくない」といわれた

親の成育歴を医療チーム内で情報共有してもいいの?
直接のケア対象でない母親についての情報をどこまで共有できるのか悩む

テーマ⑨ 看護師の態度・発言・方針
時間外受診の電話対応が看護師間で異なるけれど,それでいいの?
子どもの症状が心配で時間外受診を希望する母親への対応が看護師間で違うと母親から不満が聞かれた

テーマ⑩医師の治療方針
救急外来だからって子どもに説明せずに処置を行ってもいいの?
救急外来で家族が退席を促され,子どもが抑えつけられて処置を受けている

医師は鎮静の指示を出しているけれど,説明すればMRI検査をできるのに
子どもの様子から鎮静をせずにMRI検査を受けられると看護師が考えていても,母親の希望と医師の指示が異なる

テーマ⑪他職種との関係
職種によって子どもへのかかわり方が違ってもいいの?
抗不安薬の処方により激高を避けたい看護師と,子どもを赤ちゃん扱いして落ち着かせている保育士で対処が異なる

テーマ⑫施設の組織管理
子どもと家族のニーズに応えて付き添いを認めてはいけないの?
すべての子どもと家族に対して公平な対応が求められる

テーマ⑬先進医療を取り巻くこと
遺伝学的検査を行う適切なタイミングはいつなの?
父親は自分の遺伝性疾患について子どもに話したくない

関連書籍

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  • 重症心身障害児のトータルケア
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